ダンディズムとは、勇猛でありながらも、どこかお茶目で可愛らしい、そんな表し方があるが、このカルボナーラは、そんな気配が満ちている。
なにしろ固い。
噛め、噛め。
相当固めに茹でられたベネデット・カヴァエッリのスパゲットーニは、口に入り込むと、そう叫ぶ。
噛むことによって意識を覚醒させ、パンチェッタや黒胡椒の香りと同調し、荒々しさの中に食べることへの喜びを見出させる。
噛むことによって、卵黄の甘みさえもたくましく思えてくる、まさに山奥のパスタである。
しかしひそかに、ペコリーノと共に卵黄を乾燥させたパウダーがふられていて、眼を楽しませることも忘れてはいない。
はははと、笑っちゃう、楽しい、どこにもないカルボナーラだね。
作ったのはきっと、むくつけき頑固なイタリア人と思って会えば、お茶目で、いつも子供のような目を輝かせている、アンドレア・フェレーロシェフだった。
性格そのもの、イタリアンダンディズムが生んだ、モダンカルボナーラ。
頑固でおちゃめなイタリア人、ブラヴォー!!
シャングリアホテル 「ピャチェーレ」にて。