岸田シェフの料理にいつも思うことがある。
洗練され、研ぎに研がれているのだが、温かい。
唯一無二の孤高たる料理なのだが、どこか懐かしい。
スペアリブの鴨レバーソースである。
スペアリブの煮込みであるが、鴨レバーソースと揚げたニンニク、クレームドカシス、そしてレバーの臭みを和らげるために、74年のアードベックを入れたという。
何か豆豉排骨的な、発酵の練れたうま味があって、それがスペアリブが持つ甘みに色気と力を与えている。
食べるたびに、かじる度に、顔が緩んでくる。
そんな料理だった。
ちなみになぜ74年を使ったというと、岸田シェフの生年だからだという。
絵画のように料理に署名をする。
そんなシェフのユーモアなのだろうか。
カンテサンスにて。