コラボの意味

食べ歩き ,

「辻留」藤本料理長、「ラフイナージュ」高良シェフによる、初コラボの2品目は、椀盛だった。
清し汁仕立て 鴨叩きよせ 焼栗もち 柚子とある。
清し汁と鴨たたきは高良さん、餅や椀ツマは、藤本さんが仕立てられた。
なんと吸い口には、トリュフと柚子があるではないか。
共存できるのかと思いながら、静かに飲んだ。
ああっと力が抜けていくような滋味がある。
鶏と鴨でとったというスープは、脂を意識的ひいてあるのだろう。
澄んだ味わいで、ほのかに鶏類の猛々しが潜んでいる。
しかし飲み込むと昆布出汁のような香りが漂う。
昆布出汁も合わせたのかと聞くと、高良シェフは言われた。
「いえ使ってまさん。トリュフの中にある昆布的な香りがそう感じさせているのだと思います」。
おそろしや。
そして鴨の丸も、あまり鉄分を感じさせない。
フランス料理ならありえないまとめ方である。
これもまた意識的に鴨の鉄分を出していない。
「辻留」の空間には似合わないからだ。
コラボとは、決して自分たちの料理の見せ合いではない。
相手の文化に敬意を払いながら、自分の技術で出来ることを成し遂げる。
思いやるという気持ちが大切なのだということを学んだ瞬間だった。