衣笠丼が好きである。
むろん、親子丼も木の葉丼も、はいから丼もええが、衣笠丼の簡素がたまらない。
「お揚げにネギと卵以上」。という潔い簡潔がいい。
肉や魚のタンパク質がなくとも、十分ご飯を掻き込めルぞという姿勢に、惚れる。
また、お揚げが入っているといっても、大量ではない。
卵と同化したお揚げを箸で見つけたときの喜びと、ご飯喚起力の弱いお揚げでご飯をかき込まなくてはいけないというわびしさが、たまらなく好きなんです。
今日も京都の「やっこ」で衣笠丼をいただいた。
山椒をはらりとかけていただいた。
ミニ衣笠丼である。
なぜミニかというと、この店の名物「キーシマ」も食べなくてはいけないからである。
「キーシマ」は、うどんつゆに細い中華麺が入った、「うどんつゆ素ラーメン」である。
具は添えられたネギしかない。
これまた簡潔なわびしさである
「キーシマ」の「キー」は、黄色い麺から、「シマ」は、かけうどんを呼ぶ業界用語だという。
うどんつゆと中華麺は、意外な相性を見せて、「長年僕ら、一緒に住んでます」といった、普遍があった。
初めて食べるのに、なぜか懐かしく、既視感が襲う。
わびしい麺を食べて、わびしい丼をかき込む。
わびしい丼の余韻で、わびしい麺をすする。
わびしさが重なって、こことが豊かになっていく。
普通なら七味だろうが、食べていくうちに白胡椒をかけたくなってきた。
これはいくらうどんつゆでも、長らく中華麺を食べて蓄積した習性が出るのだろう。
ちなみに白胡椒をかけてみたが、合わなかった。