キョンである。
初キョンである。
人は、幼い鹿のようだと言い。
人は、ウサギのようだと言い。
人は、仔牛のようだとも言う。
しかしキョンは、そんな例えには当てはまらない二面性があった。
「キョンのロースト、ペコロスのアグロドルチェサラダ仕立て」は、しなやかな食感で、穏やかな滋味が、甘酸っぱい味付けと相まって、どこか切ない気分にさせた。
一方「キョンの骨付きもも肉の赤ワイン煮込み、ポレンタとニョッキ添え」のキョンは手強い。
噛む喜びを与える強かな肉は、赤い鉄分を感じさせ、食べる人間の気分をたぎらせる。
この2種類の肉を見抜いて、料理した根本シェフも素晴らしい。
だが自然は、人間ごときには、到底理解できないのだという事実を教えてくれるのだった。
西麻布「オステリア・トッド」にて









