数ある煉瓦亭の名品の一つ。
十月に入ると登場するカキフライは、カキを胡麻油でカラリと揚げる。
端正に重ねられた七個のカキフライで、右上にポテトサラダ、左奥にコールスローを従える。
まずは塩を振りかけて一口食べれば、香ばしい衣がサクッと破れ、熱々のジュースがこぼれ出し、一瞬にして口の中は、潮の香りとやさしい甘みで満たされる。
次にレモンと塩でたべれば、レモンの酸味がカキの甘みを引き立てる。
次はタルタルソース。
ソースの甘酸っぱい乳化した風味が、カキのミルキーな味わいに寄り添ってうっとりとなる。
さらにはキリリと引き締まった、辛口のウースターソースをかけて、ご飯を掻き込むのもよい。
油っぽさを微塵も感じさせない揚げ切りのよさ、細かい衣とカキの大きさのバランスも見事。
明治以来続く洋食屋の矜持を感じさせる、志高き「カキフライ」千四百円。