緑の草原に、オレンジ色の玉が散りばめられた。
緑は胡瓜、その下はメイヤードレモンとホースラディッシユのクリームである。
いくらを透かして見える緑が、初々しい。
スプーンですくう。
口に運ぶ。
その途端、いくらは夢となった。
いくらの中に潜んでいた優しい甘みだけが、胡瓜の青みと抱き合い、クリームのコクが包み込む。
時折胡瓜はシャキッと弾み、いくらはふわんと甘くつぶれ、その二つを、レモンの酸味が柔らかく照らす。
なんと優美なのだろう。
そこには、日本人には気づかなかった、いくらの「切なさ」がある。
いくらを使いながらも主役にはせず、繊細な部分だけを胡瓜やレモンと共鳴させた、ダニエル・カルバートの傑作である。
SÉZANNE にて。