ウニのすべてが包括されていた。。
そこには、余分な水分もなく、微かな雑味もない。
ウニの甘みという一点だけが、濃縮している。
福井の老舗「天たつ」の塩雲丹である。
ウニを一つずつ、正確かつ精妙に塩を打ち、熟成させる。
それだけなのだが、食べた瞬間に体の力が抜ける魔力がある。
ウニを一粒取り、口に入れる。
まだ噛まない。
そのまま上前歯の裏側につけて、酒をゆっくりすする。
ウニは少しずつ溶けて酒と入り混じる。
甘みと甘みが抱き合い、時間が止まる。
時が艶美となって舌を包み、脳を揺する。
目を閉じて、官能の余韻噛みしめる。
この大きなボウルに入ったものは、ウニが千個分で20万するのだという。
小さいものでも、ウニ50個が使われている。
一方干しウニは、その塩雲丹を干したものである。
これはさらに甘みが凝縮している。
干しウニの、小さな小さな一粒を口に入れ、ただちに酒を流して合わせてみた。
するとどうだろう。
ウニの甘みはさらに膨らんで、エレガンスになり、蜂蜜のようにとろりと甘く、脳を溶かすのだった。