鎌倉「北じま」

アスリートと禁断。

食べ歩き ,

シマアジはアスリートだった。
さかな人長谷川さんが仕立て、北島さんが造られた、シマアジのお造りは、歯に挑んでくる。
グリッと筋肉を断ち切るように噛めば,きれいな脂が,つううっと流れ出す。
そして,噛むほどに、旨みが膨らんでいく。
おそらくこの隆隆たる魚の身体を、最も感じてもらえるような厚さで切られたのだろう。
噛んで噛んで、口の中で旨みが頂点に達する。
消え去った後も、長く,余韻がたなびくのだった。
「いけない。これはいけない」。
サワラを噛んだ瞬間に、痛切なる思いが胸に走った。
船上神経締めされた、サワラである。
上質なトロのようにキレのいい脂がのっていながら、身がぐっと締まっている。
のどに消え去る刹那、サワラらしい旨みが広がり、その余韻で酒が飲めるのだった。
鎌倉「北じま」にて。
 
ご存知のように「北じま」は,被害に遭わられました。
長年集められた器も厨房も被害に遭い、まだ再開の予定は立ってないようです。
一早く、立ち直られることを、祈っています。