ぷつっ。
スッポンの卵はかすかに抵抗してつぶれ、命のしずくを舌に滴らせた。
甘い。
いや、甘いという味覚を超えた、抱擁の味わいがある。
舌や上顎を、生命の豊かさで優しく包み込み、体の奥底から笑いが満ちてくる、幸せの味がある。
ぷつっ。
一粒ずつ舌の上でつぶしながら、目を細める。
ああこれで玉子かけごはんをしたら、どんなに米が喜ぶだろう。
そこで最後の雑炊に、卵を乗せた。
ぷつっ。
舌でつぶしては雑炊を掻き込む。
明日世界が消滅しても悔いはない。
そう思うのは、こんな瞬間だ。