ふわりと肌に優しく、優美に笑う。

食べ歩き ,

その色艶は、恥じらいようでもあり、自らの命を誇示しているようでもあった。
口にするとしなやかに崩れて、酢飯と舞う。
脂は充分にのっているが、その脂が舌にまとわりつくことなく、すうっと綺麗に消えていく。
金目鯛特有の、身や脂のダレも一切ない。
絹の衣のように、ふわりと肌に優しく、優美に笑う。
やがて酢飯も金目鯛も消え、春風に似た長閑けさだけが残った。
「鮨さいとう」にて