どれから書こうか

食べ歩き ,

どれから書こうか。
そう悩むほど、昨夜出会った8皿には官能が満ちていた。
いずれもぎりぎりのうま味でとどめている。
それはシェフの勇気であり、誠実であり、愛である。
野菜、魚介、肉。
それぞれの滋味を出会わせながら、決して持ち味以上には飾らない。
皿に自然が満ち満ちていて、心をほっこりと包み、命のありがたみを湧き上がらせる。
全てに意味があり、必然を生む料理は、一口目でもおいしいのだが、静かに、ゆっくりと、よくよく噛みしめながら食べていくと、それぞれの土、風、匂いが、しみだしてくる。
村山シェフの仮借なき個性と厳格な止揚が生んだ独創は、料理のジャンルを超えていく。
様々なしがらみや概念を解き放ち、我々を広大な自然へ横たえる。
そんな料理だった。
目黒「ラッセ」。
写真は、「焼き鱧のカルドンチェッロ 実山椒 フレッシュトマトピューレ」。