熟れてこそ美しく、海深くきれい

食べ歩き ,

どこまでも、「きれい」である。
熟れた塩気とうま味が、舌に流れ、甘い余韻だけを残して消えていく。
一切の雑味もエグミもなく、優しい、澄んだ命の香りだけを漂わす。
「今回は本当によくできて、よかった」。オンマは笑った。
小イワシの鱗を隅々まで取り、洗って余分な水分を取る。
塩漬けにし、空気が入らぬよう密閉し、冷暗所で寝かし、3年の月日がたった。
昨夜ようやく光を見たメッチュは、大海原を泳いでいた命の輝きを取り戻し、洗練された力で、我々の心を安らかにする。
塩は丸く、うま味もまあるく、山奥の湧き水のように澄み渡る。
これを8ヶ月熟成させたキムチの汁と混ぜ、熱々の白ご飯にかけて、よくよく混ぜた。
ああ、やめて。
そこには天上のうまさが凝縮したような、陶酔がある。
もう絶望的にうまい。
こんどはつらみ肉を焼いて、メッチュの汁を塗ってまた焼く。
もうやめて。
肉は、突如色香を振りまき、我々を堕落させようと手を伸ばす。
これをちえちゃんと善七さんと佐藤さんと、徳山さんに食べさせたいなあ。と、とっさに思う。
「熟れてこそ美しく、海深くきれい」。
それは、70を遠に過ぎた、オンマの輝く肌と同じであった。
「韓灯」にて。