ちゅるっ。
香ばしく焼きあがったイノシシに齧り付くと、脂が溶けて、舌に甘えた。
歯を肉に当てれば、カリリと皮が弾け、皮下のコラーゲンが甘く流れ、肉の鉄分が溢れ出す。
その時である。脂が、野生ならではのきめ細かく、締まった脂に歯が包まれ、それは瞬く間のうちに甘い夢となるのである。
ううっ。呻いた。あまりのうまさに、「おいしい」と言えずに、ただただ呻いた。
たまらず箸を置き、手でつかんで食べ、再び「ううっ」と、呻く。
しっとりと仕上がって、肉を食う喜びが湧き上がる排骨もいい。
そして今度は、焼鵝ガチョウの窯焼きである。
皮は薄く、薄く、パリリと砕け、中から脂様と肉様が顔を出す。
脂は、明らかに舌を誘惑しようとして、てろりとしなだれ、精神を弛緩させる。一方肉は猛々しく、かつ優しく滋味を滴らせ、心を鼓舞するのであった。
この道50年という、赤坂璃宮の梁さんならでの焼味である。
優れた料理人は誰でもなれるが、優れた焼肉師は生まれつきであるという、ブリア・サヴァランの言葉を思い出す。
そしてこれらの焼き物が、有田焼の見事な色絵皿に盛られていることが、なんとも色っぽいじゃあ、ありませんか。
璃宮にて