さりげない料理にこそ、真実は宿る。

食べ歩き ,

さりげない料理にこそ、真実は宿っている。
ひろうすである。
箸で割って、口に運べばどうしたことだろう。
ひろうすは、ふわりと豆腐の甘味だけを口に残して、淡雪のように消えていった。
固まるか固まらないか、そのギリギリの一点に留めてある。
その脆弱さが、なんとも愛おしい。
揚げた表皮は香ばしさを放ちながらも、0.1mm程度の薄さで張られ、中の繊細さに敬意を払っている。
中から現れし干しゼンマイは、手間ひまかけられたであろうしみじみとしたうま味を広げ、野味を輝かせる。