その店を知ったのは、今から45年前,25才の頃だった。
某漫画誌に載っていたコラムに。「冷やし中華のうまい店」として紹介されていた。
早速その店に駆けつけた。
今でいう町中華といった店で、カウンターとテーブル席一つの小さな店だった。
メニューも一般的な町中華とは変わらない。
何度か通ううちに、カウンター席の後ろに張り出した白板に目が止まった。
本日の料理とあり、「豚耳の辛油和え」、「チンゲンツァイの蝦醤炒め」、「子羊の炒め」などといったそそる料理が、手書きされている、
これは夜来て、飲まなくてはいけない。
そう思い、通った。
しばらく経つと、アラカルトはやめ、コース料理専門となった。
何回か行ったが、素晴らしかったのは、締めのニラうどんと焼き餃子、水餃子以外、一度として同じ料理がなかったことである。
その頃は当日電話して、「一人だけど入れる?」なんて利用していた。
だが2015年「danchu」で中国料理特集があって、その時にトップページで紹介させていただくことになった。
だがそれが自分で自分の首を絞めた。
以来予約の取れない店となってしまったのである。
数年先まで席が埋まっている店となってしまったのである。
だがそれももう終わった。
5月2日に閉店された。
「長い間お世話になりありがとうございました」
店が終わって一週間後、ご主人から留守番電話が入っていた。
ご主人市村敦夫さん、女将さん、あなたたちが作った料理とデザートは一生忘れません。
50年間お疲れ様でした。
いつか別れが来ることは覚悟していましたが、今は味の記憶を胸に刻み、生きていきます。
さようなら、ありがとう。
敦煌
さようなら。ありがとう。
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