こんなにも柚子を慈しんだことはなかった

日記 ,

こんなにも柚子を慈しんだことはなかった。
「大夢」の柚子菓子である。
三分の一に切られた頭には、砂糖を挟んで食べる。
噛むほどに溢れ出す香りに酔いながら、砂糖との逢瀬を楽しむ。
次に皮を削って5分蒸された下側には、一緒に蒸された餅と、葛湯が入っている。
ここにあんこを落として、包むようにして食べるのだという。
あぐっといってやった。
皮と餅とあんこ。三者のことなる柔らかさが歯にしなだれる
皮の酸味を伴ったかすかな甘み、餅の穏やかな甘み、あんこの豆の香りが漂うふくよかな甘み。
三つの甘みが口の中で出会い、一つとなる。
それらを葛湯がそっと繋いでいる。
目を細め、幸せがにじり寄るのを感じながら思う。
力がみなぎってゆくのを感じながら思う。
これは食べる柚子湯かもしれないと。
柚子の中に取り込まれた太陽の力が、厳冬に冷え固まった心と体を、ゆっくりとほぐしていく。