こんなに真剣に松茸を焼く料理人を見たことがない。
松茸を縦に切り、包丁目を細かく入れる。
軸の硬い部分は、さらに細かく入れる。
しかるのち、断面を上にして炭火の上に置く。
凝視しながら、優しく触り、何度も何度も確かめる。
アルミホイルをそっと被せては、取るを繰り返し、慎重に慎重に焼いていく。
最後に塩をほんの少しふって、皿に盛られた。
表面には、透明な松茸の露がにじみ出て、キラキラと輝いている。
熱々をそっと手で持ち、傘の部分からかじりついた。
ああ、なんということだろう。
ちゅ。
松茸の純粋なエキスが、舌を流れていく。
ちゅ。
これは朝露である。
なににも汚されない、淡い淡い甘露である。
「片折」にて