この人は、真面目な真面目な方である。
「うなぎと鱧、それに穴子がイタリア料理で食べたい。長いものに巻かれたい」。
と無茶振りをすれば、さほど困った顔も見せずに、「わかりました」と口元を引き締めた。
それからである。うなぎや鱧を何匹も取り寄せては、捌く練習を重ね、様々な料理を試作して、至ったという。
「もううなぎとはもは捌けるようになりました」と、何気なくいうが、相当の試作をしたに違いない。
天草の450g天然ウナギは塩をせずに、頭と肝の出汁にパッシートを合わせたタレを塗りながら、塩焼きにし、リゾーニと合わせる。
リゾーニは、淡いフォンドヴォーを作って炊き、バローロの赤ワインヴィネガーを少し加えた。
ああ、うなぎの脂の甘みが、リゾーニの旨味と柔らかい酸味に溶けて、歌い出す。
天然ウナギの、複雑で野性味を伝える香りが、僕らを川へと引きずり出す。
日本料理の白焼きでもうな重でもない、別次元の表現がウナギの命を鼓舞して、コーフンを呼ぶ。
素直に命の根源に迫るイタリア料理の精神が、ここにある。
「ラ・ブリアンツァ」真面目な奥野シェフによる「ウナギのリゾーニ」。
真面目な真面目な人
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