「うぃー。あたひ酔っ払ってしまいましたわ」
「あら、あなたとしたことが、私もザマス。なにしろ陸に上がってからというもの、生きたまま煮干しと唐辛子、ネギをいれた醤油と酒の中に浸かっていたんですから」。
「もうねろねろ、ヘロヘロですわ」。
「あらそんなに顔を赤くして。お下品だこと」。
「失礼。顔が赤いのはもともとざますよ」。
今年も富山「御料理 ふじ居」で、「香箱カニの和風ケジャン」を食べた。
年々危険度が増しているように思うのは、気のせいだろうか。
酔いながら、エキスをじっくりと身の内に吸い込んだ親蟹は、酒と醤油のコクや甘みが、身や内子、ミソや外子とまぐわって、大変いやらしく、舌を扇情する。
混沌と脳密になったうま味が舌を抱き締め、ねっとりと口内粘膜にしなだれて、精神を勃起させる。
人間と蟹の情が絡み合い、陶酔の奈落へと突き落とす。
そこへ、炊きたてのご飯が運ばれる。
熱々のご飯にのせるのである。
もう一度言う。熱々のご飯にのせるのである。
ああいけませぬ。
ご飯に乗せて食べれば、体中の筋肉が弛緩して、崩れ落ちる。
理性を失い、食欲なの性欲なのかもわからぬ衝動に貫かれる。
もう言葉は消えた。自らの品位もなぐり捨てた(元々無いが)
殻の内側に残りしじゅるじゅるを、一滴たりとも逃すものかと、殻にご飯を入れてかき混ぜ、一口食べて気を失う。
悶絶し、虚空を見つめてだらしなく笑う・
藤井寛徳さんは、我々を骨抜きにする、食種危険物取扱有資格者である。
注意)決して各写真をクリックしてアップでみないこと、いたしかたなく見たい場合には、スマホ以下の画面で、決してパソコンでは再生しないことこと。当方責任は負いかねます