いきなり<東京鴨南蛮一人会議>

いきなり<東京鴨南蛮一人会議>
浅草「並木薮」の「鴨南ばんそば」1900円
【鴨3 麺2 つゆ3 特記サービス 合計9点】
各項目3点満点 特記1点総計10点満点

「また冬が来た」。
並木の藪で鴨南蛮を食べないと、冬は来ない。
黒に近い、こっくりと濃いつゆに、鴨の脂が浮かんで、てらりと光る。
分厚い鴨肉を齧る。
鴨のエキスが流れ出て、舌を伝わり体の奥底へと向かっていく。
鴨の団子を齧る。
団子は野味に富んで、体内に眠りし野生に火をつける。
細いそばは、ツルルと唇を震わせ、口の中をしなやかに過ぎていく。
合間に短冊のネギを食べて句読点をつけ、再び鴨肉を齧る。
小さな脂身が一個入っているのがいい。
えいっと力を入れて噛みしめれば、くにゃりと脂が裂け、のちに溶けて、寒風に冷え切った心身を抱きしめる。