そっと柔肌に触れてみる。

食べ歩き ,

ある日、どうしようもなく「香味屋」のオムライスが食べたくなる時がある。
一人出かけて頼みたい。
運ばれたら、お姿を眺め、そっと柔肌に触れてみる。
できることなら頬ずりをして、君の命のぬくもりを確かめたい。
ああ愛しの君よ。
君はなぜにそんな輝くのか。
君にスプーンを入れる瞬間、小さな声で「ごめんなさい」というのは、僕だけだろうか。
割れた君の肌から、オレンジ色のチキンライスが見えた瞬間に、歓喜のため息を漏らすのは僕だけだろうか。
食べ進むごとに、ときめくのは僕だけだろうか。
半分ほど食べたら、ウースーターソースをライス部分にちょいとかけ、下町の娘と変貌した君を、抱きしめたくなるのは、僕だけだろうか。