〜青森すましそばの底力〜

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〜青森すましそばの底力〜

「うまいっ」。
白い袋から滴り落ちる、鼈甲色の液体を舐めた時に、思わず叫んでしまった。
これが「すまし」である。
醤油が大量生産されず、希少なものであった江戸時代後期まで、調味料としてこの地で活躍した「すまし」である。
長い間、作られれていなかったが、古老の話を聞きながら、ここ八戸「山の楽校」で復活させた。
最初はうまくいかなかったらしい。
しかし玄米味噌と大豆味噌の割合、水の分量を幾度か変えて試行錯誤し、ようやく完成した。
玄米味噌と大豆味噌を合わせ、その倍量の熱湯にとかす。
しかるのち布の袋に入れて、自重のみで滴りおとす。
すると混ざり合わさった汁は、あの味噌汁色の茶色なのに、醤油色のエキスが滴り落ちる。
これを、干し椎茸と昆布といりこの出汁に、人参と牛蒡を入れて煮込んだ出汁で溶き、かけそばを作る。
「すましそば」である。
おそらく全国で唯一の「すましそば」は、温かさと優しさに満ちていて、汁をすするたびに幸せのため息が漏れる。
うま味が出過ぎない、そばのことを思いやった味わいといってもいい。
実は食べたのは一昨日なのだが、こうして思い出すと、無性に懐かしく、会いたくなってくる。
味噌を澄ましたから“すまし”なのだが、それは現代のうま味過多とは、正反対にある、うま味の“すまし“があって、心を洗うのである。