〜焼肉師は生まれつきである〜

食べ歩き ,

〜焼肉師は生まれつきである〜
同じ肉なのに、同じ肉塊で同じサイズなのに、どうしてこんなに味が違うのか。   
タン、カルビ、モモ
和田さんが焼くタンは、噛めばミルキーな甘みが溢れ出し、タンの優しく豊かな滋味を、余すところなく堪能させて、
ビールが飲みたくなる。
高良さんが焼くタンは、噛めばタンに潜んだ野生が顔を出し、この部位のエロさが湧きい出て、ワインワインと叫びたくなる。
和田さんの焼くカルビは、噛めば肉汁がどっと出て、実に肉々しく、ああ俺は今肉を食っているぞーと叫び声をあげながら、
酒をあおる。
高良さんの焼くカルビは、噛めば血と脂が肉汁と絡み合い、香りが複雑で、官能を刺激し、鼻息が荒くなりながら、
カベルネソービニヨンをぐびぐびと飲んでしまう。
二人とも互いを尊重し、互いの焼きに感動しながらも、「ああいう風には、焼けない」という。
ブリア・サヴァランは言った。
「料理人には誰でもなれるが、焼肉師は誰でもなれるワケではない」。つまり天性が成せる要素が強いのである。
舌に広がり、鼻に抜ける。二人の焼き師の天性に、その言葉を噛み締めた、渋谷「ゆうじ」の夜。
〆はハツ下とギアラ、小腸のすき焼きに、テール茶漬け。