〜海の和音〜

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〜海の和音〜
椀の蓋を開けた瞬間、「やり過ぎかな」と思った。
味が濃いブルターニュ産ブルーオマールの殻と野菜でとったスープが張られ、礼文島のウニ、高温でさっとポワレしたオマールの肉、フュメドポワソンで炊いた黒鮑、鶏の出汁で炊いた冬瓜が沈めてある。
まずはスープを一口。ああなんたることだろう。
スープが舌の上で、輝いている。
上品で滋味深く、濃縮した海老の香りと共に、海の底へ引きずり込まれる。
はぁ~とため息を吐きながら、今度は雲丹を口に含みスープを飲み、
鮑を食べ、オマールを食べた。
やり過ぎではない。盛り込みすぎでもない。
質の高い食材ならではの品格を信じ、敬意を払ったシェフの計算が、見事に椀の中で一つになる。
それぞれにある海の豊饒と清冽が、静かに溶け合い、和音を奏でていく。
あくまで主役のスープを盛り立てながら。
名古屋「トゥラジョア」の「海鮮の椀もの」。