〜喜びの合唱〜
四つの胃袋、大腸に小腸、ハツにフワ。
同寸に切られた内臓たちが、身を寄せ合いながら喜びの合唱を響かせている。
カラブリア風モツ煮込み「「色々なモツの辛い煮込み ムルセッドゥ」である。
それぞれ異なる食感が際立ちながら、味によどみがない。
トマトの旨味と唐辛子の辛味の中で、モツの甘みがひっそりと息づいている。
ああ。うまい。
思わずひとりごちた。
「これ3日間かかるんです。それぞれ別々に茹でて、同寸に切って、別々に炒めて煮込みました。向こうでは屠畜してすぐに洗って一緒に煮込んじゃうんですけどね」と、小池シェフは、苦労を微塵も感じさせない飄々とした口調で言った。
おそらく最後にかけられたチーズにも、1gの妥協もないはずである。
イタリア郷土料理の芯を深く、正確に理解し、現代に生かす。
しかし
「その郷土料理で使っていない食材や調味料は、一切使いません。しかし調理過程や方法は、化学的に検証して、もっとも良い方法を選びます」。
こうして作られた郷土料理は、元になった料理を知らなくとも、その料理へとの思い出がなくとも、僕ら日本人の心を捉える。
「洗練」と言う言葉が正しいのかわわからない。
しかしイタリアから遠く離れたこの地に、真の理解者がいる。
伝統料理の明日を作ろうともがく、アーティストがいる。
二度目の「オステリア・デッロ・スクード」素晴らしき料理は別記にて