「目を閉じていただけますか」。
言われた通りに閉じ、まぶたを開けると、そこには山林に佇む筍があった。
すくっ。
端正な姿で筍が屹立している。
そうっと皮を剥がすと、山と海が現れた。
ウツボの炙り焼きとロティされた筍が合わされ、上には種付け花が乗せられている。
じっくりと火が入れられた筍は、幼い甘みのエキスをを滴らせながら、ほろりと砕け、ウツボは焼けた皮が野生の香を放ち、グリグリとした食感のたくましい肉が、歯を包み込む。
遠く遠く離れた竹林と海底で育まれた命が、手を結ぶ。
天に向かって伸びんとする筍の勢いと、海底で獰猛に餌を食らうウツボの生命力が見事に合一して、味のうねりとなり、我々の舌を打ちのめす。
これはフランス料理でも日本料理でもあり、フランス料理でも日本料理でもない。
浜田統之シェフの、孤高なる料理である。
そんな彼の料理の話はまた今度。
「星のや東京」にて。
「目を閉じていただけますか」
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