「活きイカ」と「逝きイカ」

食べ歩き ,

「イカ刺しお願いします」と、頼んだら
「わかりました。今イカを仕入れてきますので」と、ご主人が店を出た。
ご主人は手ぶらで帰ってきて、「今イカがきますので」という。
さらに「糠漬けサンマをください」というと、
「わかりました。しばらくお時間をください」と言われた。
観光客でごった返す函館朝市は、活きイカ刺しだろうが、焼き魚だろうが作り置きしてあり、解凍するか、チンするだけなので、瞬く間に出てくる。
これらはみな「活きイカ」ではなく、「逝きイカ」だろうと、突っ込みたくなるイカなのである。
しかし、函館の寿司屋の親父からに教わった、この店は違う。
駅からそう遠くないのに、基本的に観光客は、皆無である。
「お願いしまあす」。同じ市場内にある魚屋のおばさんが来て、声をかけた。
ご主人は、また外に出て、さばいたイカを持って帰り見せ、「今切りますので」という。
楽しくなってきた。
秋刀魚は素朴な美味しさがあり、イカはまだ爆ぜていて、足の吸盤は皿に吸い付く。
ご飯はピカピカかがやき、がごめ昆布を入れた味噌汁は、緩やかにうまい。
自由市場「カフェマルシェ」にて。