「日本で初めて作ったよ」。趙楊さんが嬉しそうにいう。
「牧元さんも初めてでしょう」。得意げである。
豆乳から作った自家製豆腐を揚げて作った、麻婆豆腐である。
食べれば、通常の麻婆豆腐と違って“逃げ場”がない。
通常であれば、豆腐が潰れて甘みをにじませ、麻辣を緩和させる。
しかし揚げ豆腐では、一瞬のタイムラグがあるため、口の中はすでに大火事である。
燃え盛る炎に、後から水をかけても消えにくいのである。
しかも揚げ豆腐の衣にも、麻辣が染み込んでいるため、なお辛い。
ハーハー、ヒーヒー、フーフー、ヘーヘー、ホーホー、ハ行変化を言い合うだけで、汗と鼻水が放出する。
麻辣と香りが破裂し、ぐるぐると回りながら。少し気絶する。
それがいい。
たまらなくいい。