「宝泉」のぜんざい   <都人の日常7>

食べ歩き ,

古来より小豆は、邪気を払うといわれ、京都では節分の日に、厄を払い、無事に過ごせるようにと「厄除けぜんざい」を食べるという。
「宝泉」のぜんざいは、丹波大納言小豆がふんわりと汁の中に沈んでいた。
木匙ですくえば、豆が5〜6粒乗ってくるが、これは一気に噛みつぶすのではなく、舌でもて遊びながら、一粒ずつつぶしていくのがいい。
あるいは1〜2粒だけを木匙ですくい、じくじくと噛みしめるのもよい。
かすかに塩気をきかせた、優しい甘さが潜んだ汁を飲み、豆の香りを楽しむ。
モチに歯を包まれながら、豆を一粒一粒噛みしめる。
すると恵みへの感謝が静かにわきあがって、心が浄化されていく。
それこそが、その静かな気分こそが、厄を払うという瞬間なのではないだろうか。