「噛め」。肉が囁く。 2014.09.29 食べ歩き , 東京 , 牛 , フランス料理 , ステーキ Tweet 「噛め」。肉が囁く。 「噛んで噛んで、私の血肉を、あますことなく味わいつくせ」。 そう命じた。 「仰せの通り、いただきます。ああっ。噛んでも噛んでも肉汁がとまりませぬ」。 「嗅げ」。 「もっと嗅げ」今度は、そう囁いた。 「60日間熟成した、私の体臭はどうかい」と、鼻孔へ息を吹きかける。 「ああ、たまりませぬ。甘くいやらしく、体の中に眠りし野生に火がつきました」。 「そうだろ。そうだろう」。 肉は満足げな笑みを浮かべると、皿から無くなり、天へと昇っていった。