赤坂「アムリット」閉店

牧元さん

日記 , やぁ! ,

「牧元さん、まだもしお腹が余裕あるようでしたら、あるものを用意していますけれど」。
「ん? もしかして焼きそば?」
「はい」。彼は、クリスペプラーばりの渋い声で答え、微笑んだ。
彼と初めて出会ったでのは、今から10年以上前である。
深夜、彼がやっていた大阪新地のワインバーに連れて行かれ、常連だった大阪の料理人が、「ここは裏メニューの焼きそばがうまいんや」と、頼んだのが始まりである。
以後彼は、銀座にも店を出し、その焼きそばも食べられるようになった。
その後店を閉め、今は赤坂でひっそりと店をやっている。
彼とサービス二人の小体な店で、全国から吟味した優れた食材をベースに、巧みな彼のこと、フランス料理、中華、和食とジャンルにこだわらず、「彼の料理」を出している。
そして久々の焼きそばご対面である。
配合を苦慮し、手で伸ばし、手きりした細麺が、特製ソースにからむ。
ソースは醤油や酢、紹興酒、鶏脂などを煮込み、寝かせたもの。
油は自家製葱油。
一口麺をすすると、麺が生きているかのように唇の間で弾んで、登ってくる。
しなやかだが、存在感が確かにあって、その細い体躯に、醤油やら葱やら酢やらの油やらの香ばしさをまとって、口の中で爆発する。
うまいっ。止りません。
華奢ながらたくましいのが、なんとも心憎く、人の心をわしづかみしてしまうのである。。
しかも普通は、葱やアンティーブくらいしか具を入れないのだが。今夜は特別に、鰻肝のコンフィ山椒風味入り。
肝の甘味や苦み山椒の香りが、さらに複雑混沌の味わいを生み出して、もう満腹だということさえ忘れてしまう。
さすが宮永久嗣シェフ。食いしん坊のツボつくセンスは不変なり。
赤坂「アムリット」にて。

閉店2018