「ピエール・ガニエールトーキョー」

食べ歩き ,

ロティされたロゼール産乳飲み仔羊のキャレは、歯を優しく受け入れる。
まだつたない筋肉が、砕けていく。
その食感に柔らかなムール貝が加わって、すこし色気を落とす。
ロックフォールソースは乳飲み仔羊の淡い滋味を引き閉めて、味を太くし、力づける。
添えられるのは、羊の香りが溶け込んだクスクススープで、その心憎沙に微笑む。
二皿目は、ロゼール産乳飲み仔羊のパイ包み焼きナバランソーストきた。
部位はエポールである。
焦げる寸前まで焼き込んだパイの香ばしさに、トマトの旨味を溶け込ませたナヴァランソースが答える。
焼けたパイと仔羊の香りと旨味、そしてたっぷりかけられた堂々たる伝統のソースを混ぜて食べる喜びは、いつ以来だろう。
三皿目はジゴの煮込みに、ソースはジュにエスプレット・ピメントの辛味を効かせてある。
幼いながらも、肉の凛々しさを懸命に出そうとしている乳飲み仔羊を、その辛味が応援するかのように、盛りたてる。
これまた痛快な皿である。
「ピエール・ガニエールトーキョー」では、前菜は同じ食材で五皿、メインは、同じ食材三皿を出すという特異のスタイルで攻めてくる。
ピエール・ガニエール氏から全幅の信頼を得ている赤坂シェフの傑作が続く。
これが食いしん坊心を突いて実に面白いのだな。