「これセンマイ刺し。二つの皿で牛が違うの。食べ比べてみて」
手前はあっさりとしてシャクシャク弾み、奥の皿はコクがあって甘く感じる。なにより同寸極細に切られた胡瓜とネギの仕事が素晴らしい。
「これはガツの昆布〆。がっちり巻いてマイナス0℃でおいたもの。どう?昆布のうま味がいいでしょ」
「これは1時間半茹でた蜂の巣。これも牛違い。そうそう、脂がのっていない方がお言いしく感じるでしょ」
「これはアキレス腱5時間半茹でたんだから」。
「これ煮込み。一切水を加えないで低温でじっくり時間をかけて、内蔵から水分が出てくるのを待つんだ。うん、焦げ付かないようにずっとヘラをで混ぜながらね。夏なんかやってられないよ。大変なんだから、塩味と味噌味だすからね」。
「これミノ刺し。酢味噌、ゴマダレ、にんにく、生姜、四つの味付けで食べてみて。どれがいいか教えてね」。
「どうこの子袋刺し。中々ないよこの色。一頭の豚からこの部分は少ししか取れないんだから。うん、にんにく醤油があうよ」。
てなわけで、10年ぶりのスタミナ苑。
「牧元さん何年来てないのよ」と叱られながら、豊島さん張り切りすぎて、ようやく焼く肉が出てきたのが1時間半後。
刺身でガンガン食べて飲み、ホルモン盛り合わせ、レバー焼き、サーロイン、マクラ、みすじ焼いて、なにやらコーフンしすぎた面々は、それからワインを麻布十番に飲みに行くという暴挙に出たのであった。
「スタミナ苑」