《洋食おがた ミーツ サスエ&サカエヤ》VOL 3

食べ歩き ,

《洋食おがた ミーツ サスエ&サカエヤ》VOL 3
ああなんてことだろう。
そのイカは、年増だった。
「まだまだ子供ねえ」と、60を過ぎた僕を誘惑する。
3.8キロという巨大なアオリイカを一週間寝かせたという刺身である。
手で触ると、表皮に粘りがあって、指に吸い付いてくる。
食べれば、からみつくようにして、舌に歯に上顎にしなだれ、甘え、消えていく。
イカのスパッとキレのいい甘みでなく、熟れた妖艶な甘みが、じっとりと味覚を取り込もうとする。
これはもはやディープキスである。
そして喉に消えた後も、甘美なキスに似て、余韻が舌の両端にずっと残っている。
サスエ前田のアオリイカの刺身。
以下次号。