リゾットの誠実

食べ歩き

10代の時に出会った友人が新潟に戻って作っている米がおいしくて、これでリゾットを作ってみたかったんです。そしてこれが僕のスペシャリテです」
「樋渡」の原耕平シェフはそういって、ほがらかな顔をされた。
カルナローリ米で作るのとは勝手が違う。
そのため、「半分ほどで炊きを止め、一晩寝かして米を締めました」。
米を鍋に入れ、巧みに手早く揺らしながら、アサリと枝豆を入れ、貝の出汁を入れ、作り上げていく。
淡く淡く、貝の出汁色に染まった米とあさりが混ざり、枝豆の緑が景色を引き締めている。
口に運べば、まあるい香りが口の中に漂い、米が歌う。
カルナローリで作るようなアルデンテではない。
カルナローリのリゾットが、快活なふるまいに気丈を秘めたイタリア女性だとしたら、これは奥ゆかしさの中に芯の強さが光る日本女性か。
噛めば、米は柔らかく潰れながらも、微かな微かな芯があって、コシヒカリの甘みと出汁の旨味をにじませる。
長年の友情が、彼への敬愛が味に染みている。
リゾットは、そんな優しさに満ちていた。
ああ。
口から出たため息が美しくなって、体の力が抜ける。
そこへ枝豆が、イタリア米のアルデンテを思い出させるような硬さで、静かに、甘く弾けた。
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