どこまでもさりげない。

日記

トマトソースのスパゲッティ、一つとってもそうだ。
どこまでもさりげない。
だが。
食べ終わった後に残らないソースの量。ソースのからみかた。粉の旨味が十二分に引き出された、硬いだけではない歯を少し押し返す、パスタのゆで具合。オイルの量。わずかに香るにんにく。上からかけられたチーズの量。トマトの甘みと酸味。
すべてがひとつの頂点でピタリと決まった美しさがある。
麺の一本一本が口の中で弾み歌う、躍動感に満ちている。
さらには、香ばしく揚げられた、白子コトレッタの濃密さに寄り添う、玉ねぎソースの溌剌たる味わい。
ただのトマトサラダながら、そのヴィネグレットソースの酸味の利かせかたの精妙さ。
地蛤の滋味とバジルの香りが芋の優しさに出会う瞬間。
椎茸の凛々しさと自家製サルシッチャの旨みが、響きあう喜び。
そして、理想の一点まで加熱して味わいを引き出された仔羊。
2017年、最後の外食に、この店を選んで幸せだった。

白山「トラットリア・ダディーニ」にて。