シンプルなもんもええけど

食べ歩き ,

「シンプルなもんもええけど、どれだけ手をかけたもんを出せるかが大事や。それでこそ初めてお金をちょうだいできるんやと、亡くなった親父さんによう言われました」。
炭屋の板長であった又吉一友さんは、言う。
祇園「又吉」。
ふぐ白子みぞれ仕立て。甘酸辛苦鹹を盛り込んだ 梅酸人参梅酢浸け、辛笹鰈昆布〆などの鉢、カシラ芋、芽カンゾウ、人参の白味噌雑煮椀。よこわ、伊勢海老煎、ヒラメコブ〆のお造り。 赤飯ともち米によるカラスミご飯のお凌ぎが出された後、その真骨頂である、八寸が出された。
さあもっとお酒を飲んでくださいというメッセージが込められた、6皿目の八寸である。
あんぺい、原木椎茸(宇治俵産) さわら柚子〆、伊勢海老酒煮。ちょろぎ、なまこと新このわた和え。バチコ天ぷら、あん肝鼈甲煮、たづくり。
八幡蒟蒻、地鶏松風、穴子八幡巻、銀砂牛蒡による酢ごぼう、空豆甘煮、蒸し鮑、青菜、エビ味噌真薯。
丁寧な仕事が施された17種の旬が、舌を打ち、酒を呼ぶ。
これだけで、1時間は飲みたいなあと顔を崩す。
しかしお後に、マナガツオ西京焼、血の味が素晴らしい淀大根と青首鴨と飛騨葱の粕汁仕立て、ずわい蟹の足と身のミソ和え、あまだいかぶら蒸しと続き、かにご飯で締める。
昼なのに、お酒を5合も飲んでしまった。
いいのだ。それが人生さ。