東京とんかつ会議99
大田区千鳥「とんかつ燕楽」ロースかつ定食 2100円
【肉3油3衣3キャベツ3ソース2御飯2味噌汁2お新香3特記ポテトサラダ合計22点】各項目3点満点特記1点総計25点満点
白衣のコックコートを着た息子がカツを揚げ、その奥さんがサービスと出前をし、父親のコック帽を被った老主人がキャベツを刻み、白頭巾をした母親がご飯やみそ汁の準備をし、お新香を刻む。家族経営の店である。
お互いがなにも言い合わないのに、すべてベストのタイミングで仕事が進む。見ていて気持ちがいい。さらにはキャベツやお新香の刻み、みそ汁の温め、カツ丼の玉ねぎの刻みなど、すべてお客さんに出す寸前に仕事をする。飲食店の基本としての誠実な仕事を守る、まっとうな店である。
とんかつは、2100円としては十分すぎるヴォリュームで、山形三元豚を使った肉質はいい。背脂が適妙に掃除されたロース肉は、噛みごたえもあり、肉汁豊かで脂の甘い香りがし、なにもかけずとも美味しくいただけるかつである。
生パン粉を使った衣は中粗より細かく、みっちりと肉に張り付き、噛んだ瞬間にラードの甘い香りが漂う。やはりとんかつはこうでなくちゃと思わせるとんかつである。
中低温からじっくり揚げられるため、脂に入れた瞬間には音が立たないが、次第に温度を上げて揚げ切り、じっくりと寝かせる。そのため皿の面についた衣もしならない。
脇役陣も素晴らしく、なかでも切りたてのキャベツは甘く、お新香の漬かり具合も塩分も程よく、これもまた切りたてゆえの香りがある。コシヒカリだというご飯の質は良かったが、ややパサついているのが残念。みそ汁はニンジンに大ぶりの大根、長めのささがきごぼうが入った豚汁で、甘めの味噌を使って香りがいいが、ややしょっぱい。またソースは甘目ながらキレがいい。
自家製マヨネーズを使ったポテトサラダは、芋の香りが生きた優しい味わいで、ボリュームたっぷりの単品を頼み、二人で分けて、カツ前を楽しむのもいいだろう。
久が原「自然坊」、千鳥町「燕楽」、池上「燕楽」と、とんかつ激戦区蒲田駅の手前、各駅ごとに名店がある。とんかつ好きとしては、近隣に住む人がつくづくうらやましい。
山本氏
肉3油3衣2キャベツ2ソース3御飯3味噌汁2お新香3特記なし合計21点】
河田氏