「絹笠茸の玉子ね」

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「絹笠茸の玉子ね」。
いや茸に胞子はあっても玉子はないでしょう。
いやそうではない。絹笠茸が開く前の小さい、蕾の状態をしたものを、玉子と呼ぶのだそうである。
見るとそれは、白ぶどうのようでもあり、ミニくらげのようでもあり、ふっくらとした体は透き通り、噛めばプリッシコッと答える。
表面はヌルンとして、その中に食感がある、巨大なじゅんさいのようでもある。
それをある日は、氷頭に似た食感のチョウザメの頭骨を合わせた。
スープはコンソメ色で、味わいに品があり、滋味は深いのだが丸く、なんのうま味かは、つかませない。
ただただうまく、「ふうっ」と充足のため息をつかせるだけである。
またある日は、牛のレバーに少量の卵白を混ぜて蒸したフランに、スープを注ぎ、絹笠茸の玉子を入れた。
柔らかな鉄分の中に甘みを潜ませたレバーのフランが、滋味豊かなスープに入り交じって舌の上で緩やかに崩れゆく瞬間、また玉子がプリッシコッと愛嬌を振りまく。
食感の妙、それを味わった人間の感性が刺激されることの喜びを熟知した、中国料理とは、つくづく奥深い。
趙陽にて。