「丸い」。

食べ歩き ,

「丸い」。とはこういうことを言うのだろう。
姿は、インスタ映えの対極にあって、SNSの反応も低いかもしれない。
しかしこういう料理の、底知れぬ凄みを、この上ない贅沢が、もてはやされる世の中になってほしいと思う。
潮汁で作った雑炊である。
潮汁とご飯、どちらかが出ることなく、塩は舌に一切あたらず、穏やかな地平線の味わいが、心を休ませる。
あえていうなら、微かな微かな鯛の香りだろうか。
まるでなにも旨みがないような清らかさながら、どこまでもふくよかな滋味がたゆたって、味蕾を覚ます。
「おいしい」を伝えると、
「追い鰹はしません。昆布出汁もとりません。それは料理にとって余計な香りだと思うでのです。料理にオーデコロンはいりません」。
68歳になられた、鹿児島「山映」の2代目新村健治さんは、静かにおっしゃった。