銀のスプーンを手に取って、プリンに当てる。
すると、わずかな抵抗を感じながら、スプーンはプリンに入っていく。
それが僕の矜持なのさ。
シェフが19の時から37年間レシピを変えずに作ってきた、証なのさ。
舌に滑らせれば、滑らかに広がるけど、崩れはしない。
上顎と舌で、ゆっくりとつぶす。
ふんわりとつぶれて、優しい甘みが顔を出す。
後から濃密なキャラメルの甘みと、ほろ苦さが追いかける。
そして喉に落ちていく。
たった数秒の出来事だけど、時が緩んで幸せを運ぶ。
何度食べてもおいしい。
それが僕の、昔ながらの持ち味なのさ。
銀座「一宮」にて



