炒飯は、必要最小限の塩で、味がピタリと着地していた。
だから、どこまでも優しい。
ラーメンは、醤油味はこっくりと濃いが、油脂分が抑えられ、味が丸い。
だから、懐かしい。
しかし心配になり、つい聞いてしまった。
「いや、このままです。だから味が薄いとか、パンチがないとか、お叱りをうける時がよくあります。でも変えません。理由をきちんと説明して、理解していただくよう努力しています」。
シェフの富士大介さんは、そう言って笑われた。
こういう人が好きである。
場所は福井市郊外、心配になったのは、例え市の中心部であっても、こんな品のいい中国料理はウケないと思ったからである。
しかし彼は、誰に褒められずとも、批判があったとも、正き道を歩んでいる。
海老焼売に入った筍は、極小の同寸正方形に切られ、手羽先は、1日干してからパリパリに揚げる。
麻婆豆腐の豆腐は、芯まで熱々で、よだれ鶏の胸肉は、冷えたら美味しくないので、温めておいて出す。
細部に隠された仕事と想いは、優しい品となって、 味のキレを生んでいた。
もし近所にあれば、通うのになあ。
福井「皇龍」にて。
追記
「ヤァ!」は、師匠である大鳳の渡邉さんには、まだまだ遠く及ばない。