今朝のような冷え込んだ朝にこのスープがあれば、凍ついた心がどれだけ潤うだろう。
年末の湯は、長芋・胡桃・ムール貝・冬虫花草・ 烏骨鶏の養生スープだった。
ひとさじ口に運ぶと、滋養が目覚めて、舌の味蕾に染み込んでいく。
上顎や喉、食道や胃袋に触れて、細胞にじわじわと、吸い込まれていく。
頭に浮かんだのは、「おいしい」という言葉よりも「ありがとう」という気持ちだった。
スープのうまみが、深く丸い滋味が、本能に触れたのだろうか。
しかもこのスープには、塩が一切使われていない。
香港ならまだしも、日本のスープで塩を入れてないのは珍しい。
だがうまみは深淵が見えぬほど深く、体は次第に上気していく。
もし毎朝いただくことがあれば、体が整うばかりか、精神が養われるだろう。
なくなりゆくスープに、寂しさはもはやない。
感謝の気持ちがゆっくり膨らんでいくだけであった。
早稲田「旧雨」にて