まんてん
開店時間に来たが、もう行列ができていた。
全員野郎である。
1人客である。
皆黙ってカレーの味を思い浮かべている。
30分並んで入った。
夕飯が重いので、並カレー500円にしようと思ったが、せっかく並んだのにと思い、カツカレーウィンナー乗せ850円にしてしまった。
ラーメン屋で並び、全部乗せを頼んでしまうのと同じ心理で、並んだ自分を正当化したいのである。
これを「行列錯誤効果」という。
さてカレーは、瞬く間に運ばれる。
糊状の粘度が高いカレーで、カレー香はするが、ほんのり辛い程度で、やや塩気は強い。
具は、ひき肉と玉ねぎであると思われる。
つまりそれ以上は、発見できなかった。
中毒性が高くはないのに、この混雑はどうだ。
コの字型のカウンターには、男14人がずらりと座って、黙々とカレーライスを食べている。
ほぼ全員が、カツカレーである。
学生が多いならまだわかるが、中年男の方が圧倒的に多い。
味わいは、昭和生まれならわかると思うが、夏の林間学校の最後に出されたカレーである。
あるいは昔の学食の味である。
カレーライスというより、ライスカレーと言ったほうか似合う。
粘度が高いため、皿までカレーが沁みていかない。
そのためよくよく混ぜるか、ルーに対して多めの白ごはんをかき込むようにして、皆さん食べておられる。
僕はルーとご飯を、白い色がなくなるまでよく混ぜ込む派なので、途中でルーが足りなくなった。
ソースをかけて味を濃くしたが、それでもご飯が余った。
うむ。まだ修行が足りない。