33回。

食べ歩き ,

最後は、肉と炊き立てご飯だった。

肉はサカエヤの肉、米は東郷のコシヒカリを湧水で炊いたご飯である。

肉に、越前海岸で志野さんがつくる「百笑の塩」をたっぷりとつけ、肉を噛む。

猛々しい肉の味が立ち上がり、塩によって旨味が膨らみ出す。

ここですぐご飯を食べたくなるが、食べてはいけない。

噛んで噛んで、噛む。

通常なら25回ほど噛むと、次第に味は薄くなるが、この肉はそうではない。

33回ほど噛むと、小片となっていくが、味は消えない。

最後の最後の味を楽しみながら、肉が喉に消えていく。

後に残るは、肉の確かな余韻。

その余韻で、ご飯を噛み締める。

すると米が、一瞬笑ったような気がした。

福井坂井市「むつのはな」にて