あんなに緊張されている緒方さんは、初めて見た。
師匠である上柿元勝シェフを店に招いての、コラボディナーである。
コラボと言っても、ほとんどを上柿元シェフが作られて、緒方さんがサポートする形だった。
パリの「ル・デュック」、「ロビュション」、リヨン「アラン・シャペル」、ヴァランス「ピック」、ロワンヌ「トロワグロ」で修行し、「アラン・シャペル」の総料理長を経て、ハウステンボスホテルズ総料理長、ホテルヨーロッパ総支配人を歴任されている、74歳のグランシェフである。
だが実に気さくで、故郷鹿児島の食材を巧みに使い、料理を生み出す。
どの料理も、味わいは濃密だが、行き過ぎない抑えがあって、それがエレガントを呼んでいるのだと思った。
鹿児島郷土菓子である「かるかん」を、グランマルニエでマリネし、黒味噌とタップナードをナッペし、うなぎとポルト酒ソースを合わせた皿も面白い。
鰻は山芋の化身であるという迷信があったが、山芋を使った郷土菓子と鰻が見事に合う。
また燻製にしたカンパチが、アクセントとなる魚のスープや、トマトの酸味の絶妙な利かせ方が美味しさを生むキノコのソテー、ニンニクコンフィの甘味とサバが共鳴する皿など、どれも日本で生まれた料理なれど、フレンチのエスプリに満ちている。
最もワインが恋しくなったのは、「有機霧島サーモンのポワレ、シャンパンソース」で、サーモンの綺麗な脂の甘みをソースの酸味が溶かし込み、うっとりとなった。
そして最後は、鹿児島計算牛リブロースの見事なソテーで締めくくる。
いやいや締めはまだまだある。
緒方さんの焼き飯や、グラタン、オムライス、ナポリタン、ハンバーグ、ビーフカレーからお好きなものをどうぞと来た。
これは困る。腹一杯なのに困る。
こんな大人と子供のせめぎ合いのような展開に、皆童心に戻り、嬉々として注文するのだった。
ちなみに僕は、チキンマカロニグラタンを海老に変えて作ってもらいました。
京都「洋食おがた」にて。
洋食おがた
★走る豚リエット グリーンペッパー風味
★コンソメ
★オマールブルーのブルーテとジュレ キャビア添え
ブルーテの上にジュレ オマールの卵 味が濃密だけど抑えがいい。
★明石屋かるかんと鹿島産うなぎソテー 甘辛ソース
かるかん うなぎボルト酒ソース 黒味噌ナッペ タブナード
★魚介類のスープ くアロマティック風味
帆立、きんめ、クネル カンパチ燻製面白い 京都のじゃがいも
★キノコのバターソテー トリュフオイル
マッシュルームデュクセル トマトの酸味少し
★能登 高農園のトマトと秋サバのタルト プロヴァンス風
ニンニクコンフィブールブラン タイム フィユタージュ ほうれん草 さば、トマト煮詰め
★有機霧島サーモンのpoêlerシャンパンソース まこもだけ
★鹿児島経産和牛リブロース
★海老グラタン
★バニラアイス