赤坂「コムアラメゾン」

Garbure Landaise à la Crosse de Jambon

食べ歩き ,

凍てつく風が頬を撫でると、このスープが思い浮かぶ。
そしてまっすぐに店に向かう。
熱々のスープが運ばれる。
すかさずひとさじ飲む。
ああ。
その瞬間、「生かされている」という思いが、全身を包み込んだ。
白いんげん豆の慈愛とキャベツの温かさが重なり合い、そこへ生ハムの滋味と様々な野菜の甘味が溶け込んでいる。
舌が抱きしめられ、喉が緩み、体が弛緩し、心が温められる。
優しい。
優しさは、舌を流れ、喉に落ち、細胞の隅々へと染み渡っていく。
スープガルビュイユ。
フランス南西部スペインとの国境付近ベアルヌ地方の郷土料理である。
湧井シェフは、もう二十数年作り続けてきた。
だが決して慢心することなく、こなれすぎることのないよう、毎年現地に行って味を確かめてきたという。
スープに対する愛と誠実が、生に対する感謝を生むのである。