カ ニ コ ロ ッ ケ   2004

食べ歩き ,

銀座・資生堂パーラー
 資生堂ビル2、3階で供される「クラブクロケット トマトソース」は三千二百円。一般的なレベルからすると大変高価ではある。しかしカニコロッケという一つの料理の頂きを極めた感が伝わる、風格漂う逸品である。 まが玉型をしたコロッケで、長さ約六センチ、高さ約三センチ、最大幅約四センチ。皿一面にソースが敷き詰められた上にコロッケが三個置かれ、揚げパセリが上に飾られている。きめ細かい衣にナイフを入れれば、淡黄色のペシャメルソースに蟹の赤がゴロゴロと入っているのが見える。小さい身なりながら、アメリケーヌ・ソースのように、濃厚な甲殻類特有の旨味と香りが凝縮した味わいがあって、一口毎にうならせる。トマトソースも上品。ペシャメルソースも実に滑らかで、夢見心地を後押しする。


御茶の水・御茶の水小川軒
 ビルの地階、小体な空間に品と清潔感が漂う。ガラス越しに見える厨房が、一枚の絵のようで楽しい。「カニコロッケ」(夜二千三百円、昼は定食で千八百円)は、トマトソースが添えられて俵型が二個。長さ約六センチ、高さ約三センチ。たらば蟹を丹念にほぐして仕込んだコロッケは、きめ細かいパン粉をまとい、おいしそうな狐色に揚げられて登場する。食べればほんのり蟹の風味が舌に広がるこの店の特徴は、蟹が出しゃばりすぎず、ペシャメルソースとのバランスが程よく調和していること。上品な味わいで、穏やかな気分にさせられる。付け合せも丁寧な仕事が行き届いておいしい。


入谷・香味屋
 ご存じ洋食の名店。「カニコロッケ」は千八百円。一人前で三個、白皿の上で俵型のコロッケが寄り添うように置かれて微笑ましい。非常にきめ細かい衣にナイフを当たれば、カリッと音が立って、中よりほんのりピンク色のソースがとろりと流れ出る。食べればカニのやさしい風味がふわりと広がって、思わずほほえむ。穏やかな味わいのタルタルソースが添えられるが、なにもつけないほうがカニの味は引き立つ。またはウースターソースを数滴たらして食べてもうまい。長さ約五センチ強、高さ約三・五センチ、幅三センチ弱。ジャガイモとベーコンのグラタン、茹でオクラ、ニンジンのグラッセの付け合せも、申し分なし。二個づけの小千二百円もあり。


四谷・エリーゼ
 庶民の味方、うまくて安いカウンターだけの洋食店。昼時は列もできる。「カニコロッケ」は定食で八百円。千切りキャベツとマカロニサラダを従え、デミグラスソースがかけられ、堂々と登場する。長さ九センチ、高さ四・五センチ、幅三・五センチという堂々ぶりで、俵型が二個。中粗の衣はカラリと揚げ切りよし。薄黄色のクリームソースは、やさしい味わいで粉臭くなく、ぽってりとした食感。時折カニの味がするようなしないようなといった味わいも愛敬で、デミグラスースもいやらしくなく、両者を合わせて食べれば、ご飯が進むことこの上なし。


西麻布・麻布食堂
 カウンター九席、テーブル六席のこじんまりとした居心地よき洋食店。オムライスと同時に人気なのが「カニコロッケ」(昼九百円、夜千二百円)。先が尖ったしずく型コロッケが二個。長さ約六・五センチ、高さ約五センチと大振りだ。細かい頃もが割れると中より現れしは、薄くピンク色に色づいたソース。ぽってりとした濃度のソースは、カニの味が濃く、もうそれだけでご飯が恋しくなってしまう。イタリア料理風のトマトソース、ポテトグラタンなどが添えられる。


銀座・煉瓦亭
 老舗洋食屋の「カニコロッケ」は千二百円。中粗の衣に包み、香ばしい色合いにサックリと揚げたコロッケは俵型。キャベツ炒め煮とケチャップあえスパゲッティが添えられ、ドミグラスソースを敷いて供される。ゆで玉子入りのペシャメルソースは滑らかで、玉子の甘みソースのコクが調和して、やさしくほのぼのとした味わい。そんな味わいを楽しんでいると、後味にふうわりとカニの風味が顔を出すといった按配だ。白身の白、黄身の黄、カニの赤が混ざりあった様も微笑ましい。デミグラスは香り高い。長さ八センチ弱、高さ約四センチ、幅約三・五センチ。


浅草・ゆたか
 路地に佇む風情漂うとんかつ屋。とんかつ以外の揚げ物にも定評のある当店の「カニコロッケ」は、千二百円。中粗の衣をまとい、サクッと油を感じさせない揚げ切りのよさで、薄い狐色に揚げられた俵型のコロッケは、長さ約七センチ、高さ幅とも五センチ弱。 この高さと幅による容量の大きさがこの店のコロッケの魅力で、衣とともに黄色いぽってりとした重みのクリームソースをほおばれば、口一杯にカニとクリームの味が満たされる。付け合せは千切りキャベツ。やさしい味の自家製マヨネーズ添え。三百円でつくご飯、赤だし、漬け物の脇役陣は、いずれも質が高し。


京橋・京橋ドンピエール 閉店
 「カニクリームコロッケ」は一個からで九百円。真ん丸のメダル型で、高さ約二センチ、直径約六・五センチと小降り。小粗の衣の中は 真っ白。一見ペシャメルソースのみでカニが見当たらないが、よくかみ締めると丹念にほぐして入れたカニの繊維が多数あって、カニの風味が俄然立ち上がってくる。添えられるトマトソースはイタリア風。みずみずしいサラダ添え。「たらばカニのオムライス」    円と合わせてみるのもおもしろい。

日本橋・たいめいけん
 人気店の「カニコロッケ」は、二階二千円、一階九百円。俵型にカニ爪を覗かせた独自のスタイル。中粗の衣を割ればほんのりピンク色したもったりとしたソースが現れる。マッシュルームやタマネギとともに、ほぐしたタラバ蟹が沢山入っていて、食べた瞬間に蟹の風味が口一杯に広がって、思わず顔が崩れるは必至。ソースは添えられないが、そのままでも十分に味わい深い。滑らかなポテトサラダとレタスサラダ添え。長さ約六センチ、高さ四センチ強、幅約四・五センチ。


京橋・スナックモルチェ
 「カニクリームコロッケ」六百円は、基本的には夜のメニューだが、昼でも注文可。両端が先細っていない可愛らしい姿のまが玉型が二個。きめ細かくカリッカリッと音を立てる衣の中は、ほんのりピンクに染まったペシャメルソース。カニの赤みが点々と点在して混じっている。食べると後口にほのかにカニの風味が漂う。添えられるトマトソースは洗練度高く、コロッケと相性よく。ご飯が進む。ニンジングラッセ、茹でインゲン、マカロニグラタン、クレソン添え、この値段は見事。ライス二百円。長さ約八センチ、高さ二センチ強。


浅草・ヨシカミ
 洋食のメッカ浅草の中でも取り立てて人気がある当店の「カニコロッケ」は千二百五十円。丸いメダル型コロッケで、直径約五・五センチ、高さ約三・五センチのものが三個。カニグラタンがそのまま入っているかのような重量感のあるホワイトソースで、タマネギ、カニ、砕いたマカロニ、マッシュルーム入り。小粗の衣はカリッと香ばしく、中のソースとの食感の対比が際立って楽しい。千切りキャベツとポテトサラダ添え。