海老フライは真っ直ぐでなくてはいけない。
折しも目の前には、すくっと伸びたエビフライの尻尾が天を指し
「さあ、頬張って」と、呟きかける。
たまらず、なにもつけずに先っぽに齧り付いた。
くりっ。
痛快な歯応えで海老は弾け、ほんのりと甘いエキスを流す。
塩をかければ、さらに甘みは増し、タルタルをつければ、ご飯が恋しくなる。
そのまま海老フライを全部行きたかったが、ぐっと我慢してヒレカツと行く。
細かい衣を纏った一口ヒレカツも、素のままで齧る。
揚げ切りがいい。
油切れよく、衣はカリリと音をたて、歯は肉にめり込んでいく。
次は塩、次はソースと練り辛子をつけ、ご飯で受け止める。
さあ、次はクリームコロッケの出番である。
クリームにほんのりと海老の香りがあって、優しい。
こいつは、半分食べてから残りの半分は、教えに従い、少しつぶしてご飯に乗せ、タルタルをかけた。
即席ドリアである。
ご飯と一緒に頬張れば、一人で笑いを堪えている、変なおじさんが生まれた。
ああうまい。
再びエビに戻り、タルタルにレモンを絞ってかけ食べ、辛口ソースもちょいと垂らしてみたが、エビが負けてない。
さあ最後はミニカレーといってみよう。
これは半分残しておいたヒレカツと合わせ、ミニカツカレーである。
カレーはキャラメル香がきいていて、好物の「デリー」カシミールカレーに似ている。
そういえば赤坂「まさいち」の名物カツカレーも、カシミールを目指していますといっていたな。
カレーは辛い。
だがこの甘い香りが、とんかつと合うのだな。
厨房を見れば、折しもご主人がロース肉の塊を取り出し、掃除をし始めた。
真空パックではないようである。
そこも信頼できる。
ご飯も味噌汁も、キャベツも上出来。
次回はロースカツを頼もう。
ちなみに、この盛り合わせセット、メニューにはない。
「たかむら」の高村さんが通って編み出した、この店の最適解なのであった。